型枠大工は何年で一人前?見習いから職長・独立までの道のりを現役職人が解説

建設・現場仕事

型枠大工の見習いは、いつまで材料運びを続けるのか。何年目から一人で仕事を任されるのか。これから入る人には、給料と同じくらい気になるところだと思います。

私は型枠大工として働き、後輩を教える立場も経験してきました。最初の1年は仕事を覚えるのが遅く、「センスがない」と怒鳴られる毎日。それでも帰宅後に勉強を続け、入職から1年10か月で職長を任されました。これは一般的な昇格年数ではなく、私自身の経験です。

この記事では、手元から立て込み、職長、独立まで、何ができるようになると次の段階に進むのかを、私の現場経験をもとに紹介します。年数は会社や現場、本人により変わります。

型枠大工が一人前になるまでの道のり

時期の目安私の現場で任されてきた仕事
入社~約3か月先輩の手元として材料・金物を運び、名称と使い道を覚える。セパやフォームタイ、パイプを使う作業を少しずつ教わる。
半年~1年以降経験に応じて、図面や加工帳を見ながら型枠の立て込みに加わる。
3年ほど立て込み、締め付け、押し引き、角締めなどの基本を繰り返し、手元から一人作業へ進む。
5年ほど図面を読み、階段など難しい部分で拾い出し、加工、取り付け、まとめまで担当する。
6~7年ほど力量に合った現場を任され、職長として作業の段取りや人への指示も担う場合がある。
10年以降さまざまな現場の経験と取引先からの信頼を積み、会社の中核として働く道や請負班として独立する道を選ぶ人もいる。

これは私が見てきた現場の成長イメージです。「何年目なら必ず職長」という制度上の基準ではありません。厚生労働省の職業情報提供サイト「型枠大工」も、見習いとして就業して技能を習得する例を紹介しています。

入社直後|手元は「運ぶだけ」の仕事ではない

新人の最初の仕事は、先輩に言われた材料や金物をそろえて持っていくこと。先輩がそれをどこに使ったのかを見ると、材料の名前と使い道が結びつきます。次に何が必要になるか分かる手元は、それだけで現場を前に進められます。

マンションの現場では、材料を次の階へ上げる作業もあります。重いものを何度も運ぶため、私には入社後の肉体的な壁がここでした。仕事をしながら体力が付いていきますが、重さを気合いだけで乗り切る話ではありません。運び方や安全上の決まりは、その現場の指示に従うことが前提です。

最初に覚えた、セパ・フォームタイとパイプ

材料名が分かってくると、セパやフォームタイの取り付け、パイプを取り付けて締める作業などを教わります。私の周りでは、手元を始めて3か月ほどで教え始める現場もあります。かつて先輩から聞いた「見て覚えろ」と言われて長く手元に徹する育て方とは違い、早い段階で実作業に触れさせる教え方です。ただし、この時期は会社ごとに異なります。

1年目前後から|立て込みで建物の形が分かる

次は、加工した型枠を現場で組み立てる「立て込み」。私の経験では1年を過ぎた頃から始める人が多く、手元の仕事を早く覚えた人なら半年ほどで加わることもあります。

私が新人だった頃は、部材の数字と図面を見比べながら覚えました。今は壁・柱・梁などの形が分かる加工帳を見て施工する現場もあります。図面や加工帳を頼りに、壁、梁底、梁側、大引き、ネタパイプ、スラブ、段差といった名前が、実物とつながっていきます。

立てた後の「押し引き」と「角締め」

立てて終わりではありません。壁の通りや建ちを確認して調整する作業を、私の現場では「押し引き」と呼びます。パイプサポート、チェーン、ターンバックル、サポートキャッチバーなどを、状況に応じて使います。

また建物の外側の角、いわゆる出角では、セパだけで締めにくい納まりもあります。チェーンなどで角を締める「角締め」も覚えていきます。金物の選び方や施工方法は図面・現場の指示が優先です。私は、こうした仕事を繰り返して初めて「材料を知っている」から「形と精度を作れる」に変わると感じました。

3年から7年|一人作業から職長へ

私の周りでは、丸3年ほどで基本を一通り経験し、4年目から職長の指示を受けて一人で施工に取りかかる、という道筋が一つの目安でした。ただ、一人で任されることと、何でも独断で決めてよいことは違います。分からない納まりは図面を確認し、職長に聞く。ここも技術です。

昔から「3年で覚えられなければセンスがない」と言う先輩もいました。私も最初の1年はそう言われ続けました。だからこそ、3年という年数だけで人の可能性を決める言葉にはしたくありません。教わる順序や担当できる現場も人によって違います。

5年頃に任される階段は、技術の総合問題

図面を読み取る力が付いてくると、階段を任されることがあります。私の経験では丸5年を過ぎる頃が一つの目安です。寸法を拾い出し、加工して取り付け、最後にまとめる。部分作業だけでなく、完成形から逆算して考える仕事になります。

6~7年頃、職長デビューする人も

順調に経験を積めば、6~7年頃に現場を任される人もいます。職長は自分の手を動かすだけでなく、段取りを組み、仲間に指示し、仕上がりや安全を確認する立場です。最初に任される現場の規模や難易度は、その人の力量に応じて変わります。

私の肌感では、この時期までに職長の仕事に進むのは10人中2~3人ほど。ただし、これは私の周囲で見た印象で、業界全体の統計ではありません。なお、安全衛生法令上の「型枠支保工の組立て等作業主任者」は職長とは別の役割で、対象作業には必要な資格・選任があります。名称が似ていても混同できません。参考:厚生労働省・職業情報提供サイト。

10年を超えても、勉強が終わらない

職長として複数の現場を経験し、会社だけでなく取引先からも信頼を得る。私の周りでは、その積み重ねを経て「一人前」と認められる人が多くいました。育った会社の下請けとして請負班を立ち上げる人もいれば、会社に残って現場を支える人もいます。独立を選ぶか、収入がどれだけ上がるかは、人や契約条件によって違います。

後輩を育てた経験から言えば、10人のうち、規模の大きい現場まで安心して任せられる職長は1人ほど、小さな現場を任せられる人は2人ほど、指示を受けて作業する人が5人ほど、長く手元の仕事が中心になる人が2人ほど、という私個人の印象があります。育成した人数や条件をそろえて集計した数字ではありません。「6~7年で職長になる2~3人」と「経験を重ねて安心して任せられる1人」は、見ている段階も異なります。

現場は一つとして同じではありません。職長になっても、新しい納まりや段取りに出会う。私が頼りにしているのは「何年やったから大丈夫」ではなく、分からないことを調べ、確かめ、次の現場で生かす姿勢です。

まとめ|一人前は年数だけでは決まらない

型枠大工の見習いは、手元で材料を覚え、立て込みと調整を覚え、一人で施工する経験を積みます。その先に、図面から仕事を組み立てる力と、人をまとめる職長の仕事があります。私の現場では3年で基本、6~7年で職長への挑戦、10年以降も経験を積むという流れが目安でした。

私自身、1年目は誰よりも覚えが悪いと言われながら、1年10か月で職長になりました。苦しかった時期に何を勉強し、どう仕事を変えたのか。その話は次回、私自身の修行記として詳しく書きます。型枠大工が実際に何を作る仕事なのか知りたい方は、先に前回の記事「型枠大工の仕事」もご覧ください。

初めて読む人のための部材・用語メモ

現場で名前を聞いても、最初は形や使い道が浮かびにくいものです。本文に出てきた言葉を、役割だけ簡単に整理します。

名前何に使う・何を指す?
セパ(セパレーター)向かい合う型枠の間隔を保つための金物。出来上がる壁などの厚みに関わります。
フォームタイセパと組み合わせ、型枠を外側から締め付けるための金物。
パイプ型枠の外側に当て、フォームタイなどと組み合わせて型枠を補強する鋼管。本文の「パイプ締め」に使います。
パイプサポート型枠を支える伸縮式の鋼製支柱。床・梁の下を支えるほか、壁の押し引きに使う現場もあります。
チェーン型枠を引いて位置や角を調整するときなどに使う鎖。使用方法は現場の施工条件によります。
ターンバックル両端をつないで中央部分を回し、チェーンなどを引く力を調節する金物。
SPキャッチバーパイプサポートやチェーンを型枠側につなぐ際に使う金物。本文でいうサポートキャッチバーの一例です。
梁底・梁側梁の底面を形づくる型枠と、側面を形づくる型枠。
スラブ・大引きスラブは床などになる板状のコンクリート部分。大引きはスラブ型枠の下で根太を受け、荷重を支柱へ伝える部材です。

「ネタパイプ」は私の現場で使う呼び方の一つで、床の型枠を支えるパイプを指します。呼び名や部材の使い方は現場によって異なるため、実際の作業では加工帳と職長の指示を確認します。

参考資料:厚生労働省 職業情報提供サイト「型枠大工」、コンドーテック「型枠部材」、日本コンクリート工学会「型枠工事の基本」。記事中の年数・人数は筆者の現場経験に基づく目安・印象であり、公的統計ではありません。

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